2016年8月7日日曜日

優生学と人間社会 第2章の5

前回
第2章の4
市野川先生の続きです。

意思決定の二重構造、強制的同質化、帝国医務規程、遺伝病子孫予防法あたりがポイントですかね。

遺伝病子孫予防法は、後に日本の国民優生法が作られる時に大いに参考にされている法律で(松原洋子先生mp同本第5章、米本昌平先生の「遺伝管理社会」参照)、我が国にとってももの凄く関わりの深い法律です。
ちなみにwikの解説はいまいちなんで、本を読んでみてください。

っていうか、やっぱりあの事件があってからこの本の中古の値段が急激に上がってます。
先月くらいまでは2ケタだったのに。
うん、まず読むならこの本ですよ、この分野では。



◆世界恐慌は、大戦の痛手からようやく立ち直りかけたドイツにも大きな打撃を与えた。人種衛生学会が、1931年に採択した新しい指針は、早急に低価値者に対する自発的な不妊手術を可能にすべきだと訴えている
◆「治る見込みもない遺伝的欠陥者のために割かれる支出は、もはや遺伝的に健康な家系の者には総じて役立たないものとなっている。それゆえ、優生学に定位した福祉は今や必要不可欠なのである。」
◆1932年プロシア州議会は、福祉コストを削減できるような措置を早急に講ずる、という決議を採択。この決議にもとづいて、プロシア州保健省は同年断種法案を作成。州レベルでは片付かない刑法規定の問題もあって制定には至らず。
 ・対象:遺伝性精神病、遺伝性精神薄弱、遺伝性てんかん、その他の遺伝病にかかっているもの、もしくは遺伝的遺伝子質の保因者
 ・不妊手術は本人同意にもとづいて実施
◆1933年1月にヒトラー政権発足。7月にドイツ初の断種法「遺伝病子孫予防法」が制定。(3月に「授権法」によって立法権を得ていたため議会の承認なしで制定)
 ・プロシア州断種法案に重度のアルコール依存症が追加
 ・本人の意志に反しても不妊手術を実施できる
◆ナチスだけではなく、強制処置を止むを得ないと考える者は、社民党内部にも相当数いた
◆原則はあくまでも個人の自己決定だが、法的な決定能力や同意能力が期待できないものについては、法定代理人や官医、施設長などの代理の同意や決定でよく、この場合には強制措置も認められる(他の国々にも広く見られた二重構造)
◆ナチスの断種法がターゲットにしたのは、法的な決定能力や同意能力が欠いているとされ、意志や権利を尊重すべき一人前の市民ではないとされた人々

◆強制的同質化:もろもろの組織や団体から自律性や決定権を奪い、すべてを帝国政府の、ヒトラーの管理統制下におくこと
◆医療においても強制的同質化が行われた
◆1934年、保健事業の統一化に関する法律。州および都市ごとに保健局を設置し、ナチス政府が中央集権的に統括。各州の判断から統一的な医療政策へ。
保健局の経費がすべて公費でまかなわれた。医師は患者からの報酬に全く依存せずに、医学的に”正しい”ことのみを遂行できた。(シャルマイヤーの望み通り)

◆1935年、帝国医務規定
は、「帝国医師会」の設立を促し、医師という職業身分の自立性を確立する医師たちのそうした要求を、ある意味実現したが、実体は、ドイツのすべての医師をナチス政府が管理統制するというものであり、ユダヤ人医師は締め出され、当初の目標だった医師団体の自律性も根こそぎ破壊された
医療プロフェッションそのものが自ら自律性を放棄し、国有化=強制的同質化された。
◆帝国医務規程
 ・個人の利益と民族全体のそれが対立する場合には、躊躇なく後者を優先した。
 ・健全な民族感情によって正当化される目的をまっとうするためには、そうした守秘義務は解除されると定めている
 ・断種法の定める遺伝病ならびに重度のアルコール依存症の患者に接した医師が、その患者に対する不妊手術を直接、間接に遺伝健康裁判所に申請しなかった場合、これを職務規定違反とし、医療活動の永久停止を含む処罰を科した
◆ナチズム期の36~40万件にのぼる不妊手術の脅威的な数字は、医師プロフェッションの国有化=強制的同質化があった

◆1933年11月、常習犯罪者取締法。ターゲットは精神病質者。
◆当時の刑法は心神喪失者の免責を規定。
◆常習犯罪者取締法は、刑法で免責される者(↑)施設で拘禁し、性犯罪者については去勢手術も認めた。この法律によって拘禁された人々に対しては、出所と引き換えに不妊手術を実施するケースもあった

1935年6月、遺伝病子孫予防法が改正ナチス政府は、母体保護の中絶と同時に、さらに優生学的理由による中絶を合法化し、33年の断種法で列挙された疾患のいずれかに該当する場合、その中絶を認めるようにした
◆条件は、本人の同意、妊娠6か月以内、妊娠女性の生命および健康を危険にさらす場合には禁止の3つ
◆断種法と同様、本人に同意能力がない場合、法定代理人もしくは保護者の代理同意でよいとしていた
◆1935年10月、婚姻健康法(正式名:ドイツ民族の遺伝的健康を守るための法律)。結核や性病、断種法に規定された遺伝病、あるいは精神障害などをもつ人びとの婚姻が禁止され、また、婚姻に際しては、これらの病気や障害のないことを証明する婚姻適正証明書を保健局からもらうことが、すべての者に義務化された。
◆一方、健康なドイツ人については、婚姻や出産に際する特別の貸付金制度や、多産の女性を讃える政策が推し進められ、避妊や中絶は以前よりもいっそう厳しく取り締まられるようになった


第2章の6






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