2016年7月17日日曜日

文明と病気 上 シゲリスト 1

医学誌の大家シゲリスト先生の講義録です。
1940年当時の講義録なので、その点を踏まえてご覧下さい。

序論
◆人間は文明の創造者であるがゆえに、病気は人間の生活と行動に影響をおよぼすことによって、また人間の創造物に影響を与える
◆病気はいつの時代にも起こっているから、人間の掟、制度はみな病気の影響を受けてきたし、いろいろの手段でそれを考慮に入れなければならなかった
◆人と人、人と物との間の関係を調整しようと努める法律は、病人を考慮に入れなければならなかった
◆人がもってこの世に立ち向かわねばならない物質はすでに妊娠の時にきまって与えられ、その物質の半分は自分の子供一人一人に伝えられる
◆病気に罹り易い生まれつきの素質がある一方では、主に生活のし方によってきまる後天的の素質もある
◆たいていの病気の原因となる社会環境と自然環境は、こんどは代わって人間の生活を著しく変える文明によって形を変えられる
◆発展の過程において、文明はしばしば健康に有害な条件をつくり出した。文明には利点もあったが、多くの危険と病気の原因をもたらした

第1章
◆人口の6分の5が農業で生計を立てているインドでは、ごく軽微な収穫不足から恐るべき影響が起こる
◆ルーマニアでは人口の圧倒的な多数を占める農民は、不況が絶頂に達した時、はじめて栄養のよい時世を迎えた。農民は自分が生産した食物を食べていた。彼らは税金を払うことができず、政府に雇われている多数の職員が主な被害者となった。これは人民大衆を犠牲にして少数者の利益のために発展した文明の性格から起こっている
◆五千年もたったのにまだ人間は必要としている食物をすべての人に供給することを会得していないというのは、われわれの文明にたいするひとつの悲しむべき証言である

◆過食はなんら社会的な意味をもつ脅威ではない。しかし中毒する飲料の過度の使用はどの階級をも襲うものだから、はるかに重大な脅威である
◆飲酒には主な理由が二つある。そのひとつは社会的であり、経済的である。
◆災難、悲惨な生活条件、教育と休養設備の不足は人を飲酒に追いやる。不幸と抑圧を感じて民衆がうちひしがれている時にはいつでも、彼はますます飲酒によってその忘却を求めがちである
◆ウイスキーはインディアンの抵抗力を弱め、インディアンを用意に搾取の餌食とした。同じ征服法は他の場所でも用いられた
◆有害な飲酒のもうひとつの原因は民族の習慣と群衆の習性に求める。アルコールによって民衆は遠慮なしに話すようになるから、社交で民衆が集まった時にはいつでもアルコールを飲むのが習慣となった
◆フランス人が呼んでいる社交上のアルコール中毒には、いちばん高い教育を受けた階級がかかっている。それは目立つものではないが、それでも非常に有害な結果をもたらす

◆ペッテンコーファー「栄養には一定の必要標準があって、生理学の研究だけがそれを確立できる」
食習慣は古いならわしによるもので、したがって非常に堅固であり、なかなか変えられない。欠陥のある食物は明らかな人殺しの下手人ではないし、すぐに病気を起こすものでもないから、この分野において教育の仕事は特に難しい


つづき
その2






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